Monamily in Paris (...in London/in Tokyo/in New York/etc...)

派遣留学でパリの街に恋し、東京でアメリカ軍人の夫と結婚し、日系企業の駐在員としてロンドンで単身赴任中の私の純ジャパ奮闘記

イギリス人とフランス人とアメリカ人と日本人 ~英国で半年暮らして気付いたこと~

時の流れは早いもので、英国に赴任して7ヶ月以上が経過した。
以前、フランスに住んでいた頃に感じたことを基にして書いた記事として「"Let it Go" から読む日本人とフランス人とアメリカ人の違い」や、「ワクチン接種は自由を手に入れるための代償?~フランスと日本の比較~」があるが、今回はイギリス人についても触れていきたいと思う。

英国に住んで驚いたのは、イギリス人と日本人は結構似ているということ。
確かにそんな話は聞いたことあったし、全く知らなかったというわけではないが、ただ聞いたことがあるのと体験して実感するのではまた別である。

日本人は「スミマセン」を挨拶代わりのように頻繁に使うが、イギリス人も頻繁に「Sorry」を使う。正直、これは最初かなり戸惑った(笑)
いや、だって、フランス人やアメリカ人だったら絶対謝らないような場面なのに、イギリス人は日本人みたいに普通に謝る。心から自分が悪いと思っていなくても、口癖のようにソーリーソーリーと言っている。日本人と同じで、Excuse meとかThank you に近い意味でもSorryを使う。

多かれ少なかれ、私が英語を話すときのメンタリティはフランス人(ないしフランス在住の外国人)に寄っていると思われる。
なぜなら、皮肉なことだが、私が最も英語を使っていたのはフランスに住んでいた時だからである。
当時はフランスの大学院に通っていたが、留学生を対象としたコースだったから、授業は全部英語だったし、友人とも英語で話していた。さらに、恥ずかしながらフランス語が殆ど話せなかったので、街中でも「ボンジュール!」と元気に挨拶したあとは開き直って英語でしゃべっていた。
(一方で、今は日本企業の駐在員としてイギリスに住んでおり、同僚は皆日本人で、職場での会話は日本語なので、普通に日常的に日本語を使っていると言える)

フランス人はアメリカ人と同じで基本謝らないので、私も英語を話している時は謝ったら負けの精神が身に付いてしまった。
日本人の感覚でついソーリーと言ってしまうと、その時は大抵相手のフランス人からは驚いた様子で「謝る必要なんてないわよ!どうして謝るの?」と言われてしまうのだ。
逆に、自分が明らかに不利益を受けた時でも相手は謝らないことが多く、「いや、謝れよ!」と言いたい場面も多々あり、イライラしたものである(これはとにかくストレスが溜まるので、酸っぱい味のハリボを食べて発散していた)。
こんな環境で暮らしていたので、次第に自分も英語を話している時はむやみやたらにソーリーと言わないように心がけるようになってきたのだ。

それがイギリスに来てからは、猫も杓子も皆揃ってすぐにソーリーソーリーと謝ってくるから驚いたものである。
以前の記事「【フランス生活】不便が前提だから助け合えるパリ、便利が前提だから他人に無関心な東京」の中で、フランス生活のお気に入りポイントとして、日常生活の中で「スミマセン」よりも「ありがとう」という言葉を耳にしたり口にしたりすることが多かった点を挙げたが、一方のイギリス生活では日本のように「スミマセン」が町中を飛び交っている。

そして、イギリス人が日本人に近いポイントはすぐ謝ることだけではない。
他人とのコミュニケーションの距離感も、良くも悪くもどちらかというと日本人寄りだと感じた。
フランス人やアメリカ人はスモールトークが好きというか、他人とも割とフレンドリーに雑談したりするが、それに比べるとイギリス人はもう少しフォーマルな感じである。
また、挨拶や会話を交わす頻度・言葉数にも同じことが言える。
フランスでお店に入る時は必ず客側から「ボンジュール」と言うし、買い物をした後は「ありがとう、さようなら、良い一日を」とお互いに言うが、イギリスでは「良い一日を」は言ったところで無視されることが多い(笑)

また、道端で困っている時にパリであれば誰かしら必ず助けてくれる場面でも、ロンドンでは誰も助けてくれないパターンが多い。まさに東京である。
ただ、これはロンドンという街がパリよりも都会であるのも関係していると思う。東京ほどではないが、ロンドンもそこそこ都会なので、そもそも多くの場面で他人の助けが必要でないのに対し、パリはロンドンほど便利ではないというか、わりと田舎のアットホームな雰囲気が残っているのだろう。

良くも悪くも、ロンドンでは東京にいる時と同じメンタリティで暮らすことができる。
イギリスでは、日本人がイメージする典型的な「外国人(=アメリカ人のイメージ)」になる必要はなく、日本語を話している時の感覚で英語を話すくらいが丁度良い。
一方、フランスでは多少別人格のように振る舞わないと不自然というか周りに溶け込めないので(それでも周りからは「めっちゃ日本人っぽい!」と言われるくらいだ笑)、日本語のメンタリティとは完全に切り替えが必要だと思う。

勿論、言うまでもなくイギリスは西洋文化なので、日本よりもフランスやアメリカに近いところも沢山あるが、日本人がイメージする典型的な「外国人」と比べると、だいぶ日本人に近いところがあると言えよう。

多くの人が既に指摘していると思うが、これはイギリスと日本が地理的・歴史的に似ていることも関係しているだろう。
どちらも島国で、王制ないし天皇制が大昔から代々続いていて、他の国を植民地支配ないし占領してきた歴史がある。
同じ大国でも、フランスやアメリカのように革命や独立戦争を経て建国した国とはスタンスが全く違うのは見て取れる。

国歌の歌詞を見比べるとわかりやすい。


【イギリス】
God save our gracious King, 
(神よ我らが慈悲深き国王を守り給え) 
Long live our noble King, God save the King:
(我らが高貴なる国王の永らえんことを 神よ我らが国王を守り給え)
Send him victories, Happy and glorious,
(勝利、幸福そして栄光を捧げよ)
Long to reign over us; God save the King.
(御代の永らえんことを 神よ国王を守り給え)

【日本】
君が代は 千代に八千代に さざれ石の巌と なりて こけのむすまで
(小さな石が長い年月をかけて大きな石となり、その石に苔がつくまで、この世が永く永く続きますように)

【フランス】
Allons enfants de la Patrie, Le jour de gloire est arrivé !
(さあ、祖国の子らよ、栄光の日は来た!)
Contre nous de la tyrannie, L'étendard sanglant est levé
(我らに対し、血まみれた横暴な旗が掲げられた)
Entendez-vous dans les campagnes Mugir ces féroces soldats ?
(聞こえるか、戦場の野蛮な兵士たちの唸り声が?)
Ils viennent jusque dans vos bras Égorger vos(nos) fils, vos(nos) compagnes !
(奴らは君たち(我ら)の腕の中まで来て、君たち(我ら)の息子や妻を殺す気だ)
Aux armes, citoyens Formez(Formons) vos(nos) bataillons
(武器をとれ、同志たちよ、隊伍を組め(隊伍を組もう))
Marchez(Marchons) ! Marchez(Marchons) ! Qu'un sang impur Abreuve nos sillons !
(進め、進め!(進もう、進もう!) 汚れた血が、我らの畑を濡らすまで!)

アメリカ】
O say can you see, by the dawn’s early light, What so proudly we hailed at the twilight’s last gleaming,
(おお、見えるだろうか、夜明けの薄明かりの中 我々は誇り高く声高に叫ぶ)
Whose broad stripes and bright stars through the perilous fight, O’er the ramparts we watched, were so gallantly streaming?
(危難の中、城壁の上に雄々しくひるがえる 太き縞に輝く星々を我々は目にした)
And the rocket’s red glare, the bombs bursting in air, Gave proof through the night that our flag was still there;
(砲弾が赤く光を放ち宙で炸裂する中 我等の旗は夜通し翻っていた)
O say does that star-spangled banner yet wave O’er the land of the free and the home of the brave?
(ああ、星条旗はまだたなびいているか?自由の地 勇者の故郷の上に)

 

上記の通り、イギリスと日本、フランスとアメリカがわりと似た方向性の歌詞である。
日本の国歌は様々な解釈ができる歌詞だが(これが日本語の素晴らしいところだと思っている)、「君」を天皇と解釈すればイギリスの国歌とまさに同じスタンスになるし、より現代的に「隣にいるあなたの命」や「男性と女性が共に支え合っているこの世」と解釈しても、その存在が永遠に続くことを祈る根本的に平和なスタンスは、イギリス国歌の目指すところとかなり近いと言えるだろう。
これは、一度も他の国から植民地支配されたこともなければ、王制・天皇制が脅かされたこともない両国だからこそ謳える内容である。

一方のフランスやアメリカの歌詞は戦闘モード全開で、良く言えばわかりやすくカッコいいし、悪く言えば血生臭い。
端的に言うと、どちらも敵との長い戦いの末に、自由を勝ち取り栄冠なる旗を掲げたことを誇っているのがコンセプトだ。
まあ、スポーツ大会の開会式などで歌うには、こういう歌詞の方が士気が上がるとは思う(笑)

どちらのコンセプトが良い・悪いではなく、単純に建国の歴史の違いである。
アメリカの国歌は音域が広くアレンジもしやすいのでカラオケで歌って気持ち良いとか、日本の国歌はハ長調なのにドではなくレで終わっているのが気持ち悪いという音楽的な批判はさておき、歌詞に焦点を絞って話をすると、どの国歌もその国の歴史やスタンスや文化を表現した良い歌詞になっていると思う。
(ちなみに、その他の国の国歌もいくつか聴いてみたことがあるが、ドイツの国歌は「統一」という言葉が出てくるのが特徴的だと感じた。)

そして、これらのコンセプトを踏まえれば、自由を勝ち取り栄冠なる旗を掲げることを誇るフランスやアメリカでは自ずと「謝ったら負け」というスタンスになり、平和なこの世が今後も永遠に続くことを祈るイギリスや日本では自ずと「争いを避けるためにとりあえず謝っておく」というスタンスになるのも納得できる。

今回私が述べたことに対して別の意見を持つ人もいると思うが、以前フランスに住んだことがあり、現在はイギリスに住んでいて、パートナーがアメリカ人である日本人の私の見解はこんな感じだ。
もし、「イギリスかフランスのどちらかに住んでみたいけど、どっちが良いか迷っている」という人がいたら(そんな人中々いない気がするけど)、ザ・外国な異文化っぽい感じを体験したいならフランス、日本っぽいところもある方が良いならイギリスをオススメする。
私がフランスに住んでいた頃、何もかもが新鮮で驚きの連続だったのは、フランスと日本には殆ど共通点がなく(美食やファッションで有名な国というのは共通点かもしれないが)、フランス人と日本人の国民性には似ているところが殆ど無いからだと思う。
今までの記事にも色々と書いてきたが、日本と全然違うからこそ興味が湧いたし、そんなフランス人の生き方・考え方に惹かれた。
同じ西洋でも、イギリスやドイツは(それぞれ別の意味で)日本と歴史的な共通点があり、文化的にも似ている部分があるので、良くも悪くもフランスほどの衝撃・感動は受けない。
尚、アメリカも日本とは割と正反対のベクトルの国民性・文化の国ではあるが、歴史的・政治的に日本と近い国であるゆえ、我々日本人はアメリカのことはそれなりに知っているし、文化的に影響を受けている部分も多いので、フランスほど驚かされることはない気がする。

これまで幾度となく「イギリスとフランスどっちが好きか?」と質問を受けてきたが、正直ベースで答えるならフランスである。
別にイギリスがダメというわけではない。普通にイギリスはイギリスで好きである。
ただ、フランスという国が自分にとって特別なだけなのだ。誰が何と言おうと、パリの街並みが世界で一番好きだ。

複数の国・都市に住むと、新しい発見が沢山ある。
別に全てを好きになる必要性はないし、それぞれの良いところ・悪いところ・面白いと思うところを素直に感じたままに捉えれば良い。
そんな中でも、共通点が見えた時はその背景にある理由を探ってみるのも楽しいので、今後もまたこういった記事も書いていければと思う。