Monamily in Paris (...in London/in Tokyo/in New York/etc...)

派遣留学でパリの街に恋し、東京でアメリカ軍人の夫と結婚し、日系企業の駐在員としてロンドンで単身赴任中の私の純ジャパ奮闘記

欧州での住居選び(パリ・ロンドン) ~日系不動産屋を使わず、自分に合った物件を見つけるヒント~

今回は少し実用的な内容、ロンドンやパリでの家探し(住居の賃貸)について書こうと思う。
まあ、本当に実用的な部分は、既に色んなブログで書かれているので、どちらかというとこのブログでは、具体的に探し始めるよりも前に抱く漠然とした「どんな家に住むのが良いのか?」「どうやって探すのが良いのか?」みたいな点に触れていきたい。

まず、日本と欧州では、家の探し方が全く異なる(ちなみに、私はフランスとイギリスにしか住んだことがなく、本当に他の全ての欧州の国が同様かまではわからないので、その点はご了承いただきたい)。
日本の場合、不動産屋が候補の物件を何軒か丁寧に案内してくれて、最終的にどこを選ぶか決定するまでに多少待ってもらえることが多いと思うが、欧州では不動産屋はそこまで丁寧に説明はしてくれないし、気に入った物件が見つかったら即決しないとすぐに他の人に取られてしまうことが多い。
家探しのポータルサイトから不動産屋に内覧のリクエスト連絡ボタンをクリックすると、その物件が未だ市場に出ている限り不動産屋から24時間以内に電話またはメールにて「今日の18時から内覧に来れるか?」といった内容の返答が来る(逆に、返答がない場合は既に売り切れてしまっている可能性が高い)。
実際に内覧に行っても、不動産屋の担当者は基本的に鍵を開けるだけで、疑問点があればこちらから質問をする必要がある(勿論、営業担当者の個人差はあるし、物件の人気度などによっても変わってくるが、日本の不動産屋のようなプレゼンテーションは期待しない方が良い)。
物件を決めてからも、頭金が不動産屋の口座に着金するまでは他の入居希望者に横取りされるリスクはあるし、大家によっては特に人気物件の場合、単なる先着順ではなく候補者の中から優良入居者を選びたいという理由で、複数候補者を募ったあとに各人のスペックを審査する場合もある。尚、ここで言う審査の内容は、家賃を支払う経済力だけでなく、キチンと家を綺麗に使って近所にも迷惑をかけない人間性であるか等も含まれており、以前住んでいた物件の大家からの推薦状を提出させるケースもある。最も、日本と違い保証人制度がないので、日本よりも入居候補者自身についてしっかり見極める必要があるのは、大家の立場に立てば納得できるだろう。

さて、このような違いがある中で、欧州に移住する日本人が安心して頼れるのが所謂「日系の不動産屋」である。ここで言う「日系」とは、経営者が日本人で、専ら日本人の入居者をターゲットにしていることを指す。
日系の不動産屋で家探しをする場合、上に挙げた欧州の不動産探しのストレスを物理的にも心理的にも大分解消できるだろう。
内覧から入居までのプロセスにおいて、日系不動産屋は可能な限り日本の不動産屋に近いサービスを提供してくれたり、日本人が好むエリア(日本食スーパーや日本人学校が近くにあるなど)や好むタイプの物件(浴槽が付いているなど)を中心に取り扱っていたり、現地の住宅事情や日本とは異なる生活文化について教えてくれたりするので、入居希望者はただでさえストレスが溜まりやすい移住直後のタイミングにおける余計なストレスを軽減できるメリットがある。さらに、不動産屋によっては、入居後のトラブルや修繕も大家との間に入って仲介してくれることもある。勿論、担当者は全員日本人または日本語堪能なので、全てのやり取りを日本語で完結できる。
また、日系不動産屋が扱う物件の大家は、喜んで日本人に家を貸したいと考えていることが多いので、日本の慣習(例えば、駐在員が住居契約をするために日本の本社で決裁を行う必要がある場合、署名に数日かかっても手続き完了まで待ってくれるなど)についても、現地の不動産屋より理解があると言えるだろう。
日本人向け安心サービスとして足元を見られるため、現地の不動産屋と比べると色々な手数料を上乗せされて高くつくことも多いが、上記のようなメリットがあるため、特に家賃が会社負担となる駐在員の場合は、統計的にも安心度の高い日系不動産屋を使うことが多いのではないだろうか。

ここまで色々と日系不動産屋の利点を挙げてきたにもかかわらず、今回の記事のタイトルでわかる通り、私は日系の不動産屋を使うことはあまりオススメしない。
「あまり」オススメしないというのは、中には日系不動産屋を使った方が良い場合もあるので必ず現地不動産屋を使うべきとは言わないが、盲目的に日系不動産屋を利用することはオススメできないという趣旨である。

日系不動産屋の一番のデメリットは、取り扱う物件数が圧倒的に少ないことである。
「日本人に合う物件に絞って紹介してくれているなら良いことではないか」と思うかもしれないが、そもそも「日本人に合う物件」とは一体どんな物件なのだろうか。勿論、家族構成によっては日本人学校への通学が可能なエリアである必要があると思うし、日本のマンションなどに限りなく近い設備の物件を希望する人もいるかもしれないが、果たしてこれらは欧州へ移住する日本人全員に当てはまる条件なのだろうか。
日本人に人気のエリアが、必ずしも一般的にその都市における最も魅力的なエリアというわけではない。現地の人や、その他外国人がクールだと感じるエリアはもっと別の場所にあることが多いし、日本人の間では危険だとみなされているエリアが実は現地では活気のある楽しいエリアとして認識されていることもあるだろう。
そのような中で、限られたエリアの物件しか紹介してくれない日系不動産屋を使ってしまうと、他のエリアに住む可能性を閉ざしてしまうことになる。

私の場合、1回目の海外駐在がフランス、2回目がイギリス(現在進行形)だが、フランスの時は私も右に倣えと日系不動産屋を利用した。
結果、パリの日系不動産屋は合計7件の候補物件を親切に紹介してくれたものの、全て同じエリアの物件であった。日本人の多いエリアだからと言われ、その時は確かにその方が安心だと思って納得したものの、住み始めてから感じたのは「もっと事前に他のエリアも見ていたら、このエリアは選ばなかっただろう」ということ。そして、他のエリアを選択肢に入れるためには、日系だけでなく現地不動産屋の取扱物件も候補に入れて考える必要があると痛感した。
最も、私がパリで住んでいたアパートは大家がとても良い人で、住宅でトラブルが起きた際もすぐに対応してくれたので、ほとんど不自由なく暮らせた点は良かったが、次回パリに住む機会があれば、違ったエリアに住みたいというのが正直なところである。

上記の経験から、今回のロンドン駐在では現地の家探しポータルサイトを利用し、現地の不動産屋の仲介により今住んでいる物件を契約することができた。日系不動産屋はあまり取り扱っていない中心部エリアの街中ど真ん中に位置する、小さめだけど十分快適なレンガ造りのアパートに住んでいる。勿論古い建物ゆえのトラブルは色々起きているが、想定の範囲内であり、総合的にこの物件を選んだことにはとても満足している。
候補物件を探す段階では、日系不動産屋にも一応連絡は取ってみた。理想の物件が日系不動産屋を経由して契約できれば、自分の会社での契約決裁手続きに必要な時間なども踏まえて柔軟に対応してくれる点は楽だからである。
しかしながら、日系不動産屋は私の希望するエリアの物件は殆ど取り扱っておらず、紹介される物件はどれも日本人の多い限られたエリアばかりであった。1件だけ良さげな物件があったので内覧を希望したが、不動産屋からは「大家に確認したところ、既に他の人が入居してしまった」と返答が来た。欧州の不動産市場は一刻一刻変化しているので、本来は内覧希望の連絡があり次第すぐにアレンジするのが基本だが、こういったときに動きが遅いのも日系不動産屋の特徴である。イギリスに住むのは初めてだが、仕組みはフランスと殆ど同じであり、日系不動産屋の特色も同じだと感じた。

欧州の家探しにおける自分の優先事項が何かを理解できている人であれば、間違いなく現地の家探しポータルサイトと現地不動産屋を利用した方が良い。候補物件数が増えれば増えるほど、理想の物件に出逢える可能性が高くなるからである。
欧州で住宅に求める条件は、日本で住宅に求める条件とは必ずしも一致しないので、欧州に住んだことがない場合は、自分の優先事項が何なのかよくわからず日系不動産屋や不特定多数の日本人に流されるのも無理はない。実際、私もパリで家を探した際には、何が自分にとって重要なのかはよくわからなかったが、一度パリに住んだ経験があったからこそ、ロンドンで家を探す断面では自分でも驚くほど優先事項が明確になっていた。

これから欧州で家探しをする人のヒントになることを願い、私の具体的な欧州家探しにおける優先事項もお伝えすることとしたい。

まず、私にとって最も重要なのはエリアと周辺環境である。これは、欧州に限らず世界中どこでも当てはまるが、物件のスペックが多少落ちても自分の好きなエリアに住むことの方が重要だと考えている。
そしてパリやロンドンの場合、私は都心部ないし便利で活気のあるエリアが好きである。せっかく外国に住むのだから、その都市ならではのランドマークが近くにあったり、その都市らしい雰囲気が感じられる場所に住んだ方が良い。象徴的なイベントも中心部で行われることが多いだろう。
東京であれば多少郊外でも都内への交通の便が悪くなければ良いという考え方もあるが、パリやロンドンではストライキ等で頻繁に公共交通機関が止まるなどのリスクもあるので、行きたい場所には歩いてでも行ける距離の場所に住む方が良い。
また、気軽に1人でも外食できるリーズナブルで美味しい飲食店が少ない欧州では、基本自炊することになるが、それでも自炊する元気がない時にサクッとテイクアウトできるファストフードやサンドイッチ屋などのバリエーションがどれだけ徒歩圏内にあるかも大事である。郊外だとマクドナルドなどありきたりなファストフードしか無かったりするが、中心部であれば気分に合わせて色々な選択肢が取りうる。UbarEatsなどの出前・ケータリングサービスも、レストランから遠いと配達対象外だったりするので、街中であればあるほど選択肢が増える。
中心部の飲食店は単価が高めなのではと懸念する声も聞こえてきそうだが、中心部でなくても比較的安全と言われているエリアであれば大きな物価の差はないと思料する。逆に、中心部の方が店舗数が多いゆえに競争原理が働き安価となることもあるだろう。勿論、もっと治安が悪いエリアを選べば物価は低めではあるが、そもそもそのようなエリアは会社から遠すぎて、駐在員という立場だと現実的ではない場合が多い気がする。
週末に郊外に出かけたい場合も、中心部からであれば東西南北どの方面にもアクセスしやすいので、行先のバリエーションも増えるだろう。

人が多い都心部に住むと周辺の騒音が気になるという人も多いが、必ずしも正しい見解ではないと思う。なぜなら、騒音の要因は立地よりも同じアパートに暮らす住人である可能性が高いからである。
欧州の古い家は遮音性がそれなりに高い場合も多いし、私のロンドンのアパートのように市内で最も賑やかな通りが目の前に位置する場合は窓が二重サッシになっていたりする。
逆に、パリでは所謂住宅地エリアのようなところに住んでいたが、下の階に毎晩パーティーを開き爆音で趣味の悪いクラブ音楽を流す若い女の子が住んでいたため、騒音問題には相当悩まされた(この時は結局、大家に相談し、下の階の住人本人と交渉して解決した)。住宅地エリアは中心部と比べて広めのアパートが多いので、このようにパーティー会場にされるリスクは中心部の物件よりも高いかもしれない。クラブやバーが周辺にないゆえにパーティー会場にされてしまうアパートも郊外の方が多いだろう。
以上を踏まえると、都心部=ウルサイという方程式は成り立たないことが見て取れるだろう。

周辺環境・立地という点では、私は駅や職場からの距離だけでなく、「徒歩3分以内に日常使いできるスーパー、15分以内にワクワクする大型スーパーがある」「徒歩10分以内にのんびりできる美しい公園や庭園・緑地スペースがある」「徒歩15分以内に普段使いできるパン屋/サンドイッチ屋やハンバーガー屋、ファストフードなどの選択肢が多数ある」「最寄り駅に複数路線の電車が乗り入れしている」「通勤で日常的に使う電車がキレイかつ本数が多い」「自宅周辺の通りがオシャレな雰囲気」「興味のあるお店や有名スポットの殆どに徒歩40分以内でアクセスできる」といった条件を挙げていた。
結果的に、私はこれらの条件を全て満たす物件に入居することができたが、恐らく日系不動産屋経由では中々見つからないだろう(笑)

次に私が重要視する点は、物件がその都市らしい外観の建物であることだ。具体的には、パリならオスマン建築、ロンドンならレンガ造りの建物といったところだろうか。
これは日本では全く気にしないポイントなので見落としがちだが、せっかく欧州に住むならそれっぽい外観の建物に住まないと気持ちが盛り上がらないことに、パリで近代建築の建物に住んでいる際に気づいてしまった。
敗戦国にはありがちな話だが、空襲で焼け野原になったあと、戦後復興で街並みの統一感など一切無視して住宅開発が急いで進められてきた東京において、外観が美しい集合住宅なんて見たことがないし、仮に1棟だけお洒落な建物があったところで、周りの建物と統一感が無ければ雰囲気は盛り上がらない。よって、東京の家探しでは建物の外観なんて全く気にする必要はないだろう。
一方、特にフランスやイタリアなどのフォトジェニックな街並みが多い場所に住む場合は、築数百年のカワイイ外観の建物の並ぶエリアに住んだ方が絶対に気分が上がる。
イギリスは全体的にそこまでフォトジェニックではないものの、やはりロンドンの中でもカワイイエリアとそうでないエリアがあるので、せっかくならカワイイエリアに住んだ方がロンドンに住んだ甲斐があると言える。
建物自体は築数百年でも、内装は当然改築されているので、家の中はむしろ近代建築よりモダンなことも多い。というのも、欧州の近代建築は近代といっても築30年程度は経っていることが多く、良くも悪くもモノを大事に長く使う風習がある欧州では、家具や家電も一昔前の物だったりする(欧州の住宅はほとんどが家具付きである)。実際、私がパリで住んだアパートはそんな感じで、自分が子どもの頃に実家で見た掃除機よりもさらに原始的な構造の掃除機が置かれていた。
上記の理由から、外装も内装も30年前のままの近代建築よりも、外装は数百年前のまま内装だけ数年前にリノベーションされたばかりの建物の方が魅力的なのである。

最後に、これはパリのようにエッフェル塔サクレクール寺院など象徴的でカワイイモニュメントが存在し、かつ上空からの眺望が美しすぎる街の場合に限定した話だが(ロンドンにも国会議事堂や有名な橋はあるが、個人的にパリのエッフェル塔フィレンツェのドゥオモの可愛さ・ライトアップの美しさには敵わない)、窓からの眺望も大事なポイントだと考えている。これがあるだけで、日常の疲れが吹き飛ぶから不思議なものである。
パリで住んでいたアパートのお気に入りポイントは、窓からエッフェル塔の上半分が見えたことで、1時間に1回のシャンパンフラッシュと呼ばれるライトがキラキラするショーは、長時間パソコンに向かっている時の休憩にも丁度良かった。
眺望については人によって好みが分かれるので、むしろ近代的な街並みが好きと言う人はロンドンや東京で眺望の良い物件に住みたいと言う人もいると思うが、私はパリのような欧州らしい景色が好きなので、ロンドンではあまりこの部分は気にしなかった。

以上が私の優先事項だが、それとは別に欧州での物件探しでは必ずチェックすべき一般事項(お湯がボイラー式かタンク式か、タンクの場合は大きさ、シャワーの水圧、セントラルヒーティングか否かなど)も勿論併せて内覧時に確認する必要はある。ただ、この辺りは個人の価値観に関係なく全員に共通する話で、この手の一般事項は詳しく解説しているブログが沢山あるため、このブログでは割愛する。

一方、多くの日本人や日系不動産屋は優先事項として捉えている項目の中で、私は個人的にあまり重要でないと思っているポイントもある。
例えば、エレベーターはあれば便利だが、無機質な近代建築の家に住むくらいだったら、エレベーターが無くても風情のある外観の建物に住むことを優先したいので、エレベーターは絶対条件ではない。とはいえ、エレベーター無しで7階の部屋ともなれば、エッフェル塔を含むパリのパノラマ絶景が臨めるなど、相応のリターンは欲しいところである。私の現在のロンドンの家は、エレベーター無しの2階(イギリス式で言うと1階)で、階段を上がる回数は1回なので、スーツケースを持っていてもそこまで苦労しない。
また、浴槽付であることも個人的にはあまり重要ではない。昔は私も浴槽は絶対必要だと思い込んでいたが、浴槽に浸かる時間があったら睡眠時間を増やした方が良いし、浴槽の掃除をするのも手間であるし、疲れが溜まっている時は浴槽に浸かるよりも疲労回復ヨガをやる方がスッキリすることに気付き、仮に日本であっても一人暮らしの場合は浴槽は不要だという結論に至った。現在のロンドンのアパートは、小さなシャワールームがあるだけだが、この方が掃除も楽だし十分である。
さらに、管理人(不在時などに荷物の受取をしてくれる人)も特段不要だと思っている。パリで住んでいたアパートには管理人が日中のみ常駐していたが、逆に荷物が届いても全て管理人室までしか配達してもらえない仕組みだったため、重量のある荷物が届いた際には、自室から少し離れている管理人室まで取りに行くのに台車を持っていく必要があった。一方、今のロンドンのアパートには管理人は存在しないが、Amazonなら不在時はドアの前に置いてもらうように指示するし、郵便小包の場合は近所の人が預かってくれることが多いので、特段不自由はしていない(Amazonの誤配は何度か発生したが、この手のトラブルはどこに住んでいても起こりうる話なので、今回の住居選びとは関係ないトピックとして割愛する)。
以上の通り、一般的には必要事項だと認知されているポイントでも、人によっては住んでみた結果としてあまり重要でなかった場合もあるので、日本での常識や一般的な情報に惑わされずに違った観点を持てると、結果的に候補物件の選択肢が増えることになる。

色々書いたところで最後に、一見良さそうに見えて注意が必要な物件についても触れておこう。
不動産屋や物件情報サイトを見ていると、物件の説明書きの中に「建物内にスーパー有」とか「建物内にジム・サウナ有」とか、そういった謳い文句が入っていることがある。一見、ラグジュアリーな雰囲気を感じる文言だが、実際のところこういった物件は、周辺エリアが充実しておらず不便な立地に建設された新興住宅地であるがゆえに、アパートそのものにスーパーなどを併設しているケースが多い。特に、日本人が多いエリアは本当の中心部・繁華街からは少し離れた場所であることも多いので、この手の謳い文句には特に注意が必要である。
勿論、立地が本当の中心部であれば、色々なお店が立ち並ぶ通りにおける地上階が店舗・上の階が住宅の物件であることもあるだろう。その場合は、新興住宅地ではなく数百年前から存在する風情のある通りなので、欧州らしさが味わえて楽しい場所だと言える。特に、パリでは店舗は地上階のみ、それより上の階は全て住宅と決められているため、オシャレなショッピングストリートの店舗の上階に住めるかもしれない(地上階の店舗が飲食店だとまた別の問題はあるものの、これは一般的に認知されている話なので今回は割愛する)。
しかしながら、大体の物件は前者の「周辺エリアが充実していない不便な立地に建設された新興住宅地」である方が多いわけで、日本の団地のような建物の地上階にあまりパッとしないスーパーや廃れた飲食店やスポーツジム、理髪店などが数店舗入っているのが現実である。
中心部からそこまで遠くない新興住宅地エリアというのは、30年前位に開発されたエリアであると推測されるため、まさに日本における30年前の団地のような雰囲気なのだ。日本で30年前に建てられた団地が廃れて限界ニュータウンとなりつつあるのと同様に、欧州でもこの手の集合住宅は寂しげな雰囲気が漂っている。
建設された当初は地上階の店舗たちも賑わっていたのかもしれないが、今となっては殆どの店がシャッターを下ろしているなど、廃墟とまでは言わないにしても、それに近い空気が醸し出されている。団地から抜け出して周辺で買い物をしようと思っても、そもそも店舗が近くに殆どないからこうなっているわけだから、八方塞がりとなってしまう。
尚、ここ数年で開発が進んだもっと本当の郊外(中心地から大分離れたエリア)であれば、築年数が浅い高層ビルなど、現代的な構造の集合住宅や複合施設が多いので、中心部からの距離よりも家のスペック重視の人や近未来的な建物が好きな人はこのようなエリアが合っているだろう。こちらは、日本で言うとタワーマンションに住む感覚に近いと言える。
ただ、日本のタワーマンションもかつての団地と同じ構造であると言われているのと同様に、欧州郊外の近未来型な超新興住宅であっても、辺鄙な場所であるがゆえの充実した設備であることは理解しておく必要はある。
日本でも「○○ヒルズ」などの呼称の富裕層向け複合施設付きタワーマンションは増加し注目を集めて続けているが、特に最近建てられた物件の場合、あまり便利な立地ではないことが多い。
24時間セキュリティ付きの住宅、職場オフィス、スーパー、飲食店、映画館、アパレルショップ、銀行、スポーツジムの全てがこの「ヒルズ」の中で完結すると言うと聞こえは良いが、周辺・徒歩圏内に同様の施設がないことを暗に示している気がするし、複合施設内の中の世界だけで生きるのは何となく閉塞感があるのではなかろうか。
ちなみに、この「ヒルズ」に付属している施設は、全て米軍基地にも付属している。
基地の中で生活が全て完結するからといって、基地の中の世界だけで生きていたら間違いなく息が詰まるだろう。そして、言うまでもなく、基地の中での生活は別にラグジュアリーでもゴージャスでもない。
ということで、結局のところ、このような「ヒルズ」に住むのは、米軍基地に住むのと変わらないのではないかというのが私の極論である。
私は夫が米軍人なので、仮に将来のどこかのタイミングで基地の中で一緒に暮らすことになったとしたら、それはそれで楽しもうと思っているが、わざわざ自ら高いお金を出して米軍基地みたいな「○○ヒルズ」に住もうとは思えない。
どうせ同じ予算で住居を探すなら、人工的に作られた新興住宅地よりも、東京なら浅草・蔵前などの下町風情の溢れるエリアの方がよほど趣深くて好きだ。倉庫を改造して建てられたお洒落な隠れ家カフェも多いし、隅田川沿いを散歩するのも楽しい。

・・・・欧州の家探しとは全く関係のない話に逸れてしまったが、言いたかったことは「商業施設付きを謳う物件には要注意」ということである。
日本でも同じことが当てはまる一方で、欧州での家探しとなると土地勘のないため、本当の郊外を除けば、どのエリアが新興住宅地でどのエリアが歴史的なエリアなのか、住むまで気付かないケースも多い。
勿論、新興住宅地の全てがダメだと言っているわけではないが、不動産屋の宣伝文句をポジティブにとらえすぎず、きちんと自ら足を運んでエリアを散策してから住居選択を行ってほしい。

もし、初めての欧州駐在・移住で、やはり現地不動産屋を使うのはどうしても不安だというのであれば、日系不動産屋を使っても良いとは思う。
ただ、日系不動産屋であっても全てがスムーズに進んで安心かと言えばそうとは限らず、担当者によってはあまり頼りにならない場合もあるし、担当者は良かったとしても、そもそも現地の不動産事情・住宅事情と完全に切り離した環境で賃貸契約を結ぶのは不可能なので、何でもかんでも不動産屋が手取り足取り助けてくれるとは思わない方が良い。
このような事情を踏まえ、1人でも多くの新規移住者が、このブログを参考にして、現地不動産屋を使って自分にぴったりの理想的な物件を見つけられたら、とても嬉しいと思っている。