Monamily in Paris (...in London/in Tokyo/in New York/etc...)

派遣留学でパリの街に恋し、東京でアメリカ軍人の夫と結婚し、日系企業の駐在員としてロンドンで単身赴任中の私の純ジャパ奮闘記

「キャリアか恋愛か」という永遠の問いについて

私が新入社員の頃、「結婚しても仕事を続けたいか?」というしょうもない質問は、わりと当たり前のように就職活動の面接や日常会話で持ち出されるトピックであった。
その回答が「YES」だと、相手からは間違いなく「仕事が大好きなんだね!」とか「バリキャリ志向なんだね☆」とか「バリバリ働きたいんだね!」とか、そんな言葉がバリバリ返ってくる。

あのさ、別に皆が皆そんな前向きな理由で仕事続けたいと思っているわけじゃないんだよ。というかさ、結婚して仕事辞めたとして、離婚したら無職のシングルマザーになるリスクが付きまとうんだよ?もし、結婚後に相手の男が豹変したり、関係性がうまくいかなくなったりして別れたいと思っても、自分が専業主婦でその男に経済的に依存していたら離婚できないでしょ。冷え切った関係のまま夫婦生活を続けている親世代を見ていたら、そんな風になりたくないと思うのは普通のこと。新卒第一主義のこの国で、一度離職してブランクがある人間が、以前と同等の仕事に再就職するのってどれだけ難しいかわかるよね?相手の男が養育費や慰謝料を払ってくれるとも限らないし、自分の身は自分で守るしかないの。そういう将来のリスクを考えたら、仮に今の仕事が大好きではなかったとしても、就職氷河期の時代に必死に掴み取った地位をそんな簡単に手放せるわけねーだろ。バリバリバリバリうっせーんだよハゲヽ(`Д´)ノプンプン

・・・という本音を胸の奥にしまいこみ、「はい、頑張りたいです」とサラッと簡潔に流して大人の対応をしてきた80年代生まれの会社員は私だけではないだろう。

あれから時は流れ、令和の時代を迎えた今、じわじわと物価は上がっているのに平均賃金水準は30年以上ほとんど上がっていない我が国では、望まずとも共働きが一般的になり、ようやくこのような質問もあまり耳にしなくなってきた気がする。男性も育児を行うのが当たり前になったし、前向きな理由での転職も当たり前だし、在宅勤務の普及で子育てと仕事の両立も多少容易になりつつあるし、本人の意思に反する住居移転を伴う転勤を無くす企業も増えてきている。国の少子化対策の全てには賛同できないが、少なくとも何もしていなかった昔に比べれば、行政も企業も社会も個人も努力して変わろうとしている点は認めて良いだろう。

一方で、もっと単純な「キャリアか恋愛/家庭か」という問いは、上記とは関係なく、職業選択の自由と自由恋愛が成立する限り、この世から消滅することはない。
大概は、交際または婚姻関係にある男女の両方が職業上、住居に制約が生じる場合に、この問題が発生する。
先の段落で、本人の意思に反する住居移転を伴う転勤を無くす企業が増えてきているとは書いたが、そもそも本人が住居を移転してでもその仕事をしたいと考えた場合、話は別である。これは最早、会社の制度や国の問題ではなく、その個人の問題だ。

約10年前、私が社会人になって最初の勤務地は西日本の地方都市だったが、当時の田舎のお年寄りにとっては女性が全国転勤するというのは想定外だったらしく、何度も「自分の仕事の転勤でここに配属された」と伝えても「ご主人のお仕事で引っ越してきたのね」と超訳されてしまうことが多かった。
あれから10年経過した2024年の現代では、夫婦両方が全国転勤有の仕事をして別の地域に住んでいるのはよくあることなので、片田舎であっても、あのような反応をされることも減ってきているのではないかと推測する。
全国転勤だけでなく、女性の海外駐在員も珍しくないし、中には夫婦揃って別の国に駐在していたり、妻が子どもだけ帯同して海外駐在していたり、色んなパターンがあると思う。

上記の通り、現代の夫婦には色んなパターンがあるとはいえ、現在の私たちのように、私自身が日系企業のイギリス駐在員で、夫が日本に駐屯するアメリカ軍人、赴任直前に東京で結婚し、同居ゼロ日のまま私が単身赴任で渡英(プラス、夫も今年中には転勤可能性有)というケースはさすがに珍しいと自負している。
だからこそ、その立場で色々と伝えられたらと思っており、第一弾としてこのテーマでブログを書くことにした。

まず、「なぜ夫が日本にいるのに、海外駐在する選択を取ったのか」と聞かれることがあるが、そもそも、私の海外駐在が決まったことがきっかけで、「私たちの関係をこれからどうするか?」と二人で話し合った結果、しばらく物理的に一緒に住むことできなくても、お互いをこれからの人生を一緒に歩む相手として将来を約束することを決め、私の赴任前に入籍したので、順番が逆である。
なので、むしろこの時大きな決断をしたのは、離れ離れの新婚生活を受け入れてでも私と結婚することを決めた夫の方であり、仮に私が逆の立場だったら躊躇するとは思うので、こんな条件でも私をパートナーとして選んでくれた夫には本当に感謝している。

30代半ばでこのような岐路に立たされた時、人によっては別れを選んでも何も不自然ではないと思う。同年代の多くの結婚願望がある独身者は、早く子どもが欲しいとか、家が欲しいとか、とにかく落ち着きたいとか、そういった条件面を最優先にして恋活・婚活に励んでいる場合が多い。
そんな時に、相手から「しばらく海外駐在する」と言われたら、他の相手を探した方が得策という考え方も十分合理的である。
個人的には、相手ありきではなく条件ありきでのパートナー探しという考え方はあまり好きになれないが、一般的な同年代は条件ありきで恋活・婚活をしているだろうし、それを否定するつもりは全くない。あくまでも自分の考えは自分の考えであり、それを人様に押し付けるほど私も傲慢ではない。
結婚願望の無かった私とは正反対に、夫は結婚願望が強かったので、私としても彼を縛り付けるつもりはなく、「恐らく3年はロンドンで仕事することになるし、将来子どもが欲しいと思うかもわからない。すぐに一緒に暮らして子どもを作って普通の結婚生活を送りたいなら、あなたのそばにいてくれる他の女性を探した方が良い」ともハッキリ伝えた。ましてや、夫も退役までの9年間は数年おきに世界規模で転属を繰り返す人生であり、私が日本に帰任するタイミングで、夫がまだ日本に駐屯している保証はどこにもない。どう考えても、条件面で見れば、自分に付いてきてくれる女性を選んだ方が良いに決まっている――――――。

それにもかかわらず、夫の回答は

「それでもいい。他の女性なんていらない。君とずっと一緒に残りの人生を歩んでいきたい」

だった。

日本における離婚率は30%強、そのうち国際結婚の離婚率は70%、さらに相手が米軍関係者の場合は95%である。

今でも、私には永遠なんてわからないけど、それでも少なくともこの瞬間、生まれて初めて、「この人を一生大事にしたい」と心から思ったのは、噓偽りではない。

・・・・さて、少し惚気すぎたので本題に戻るが、上記の状況になる前の段階で「なぜ彼氏が日本にいるのに、海外駐在する選択を取ったのか」と更Qは飛んでくるだろう。
ここでやっとタイトルの「キャリアか恋愛か」という問題に直面することになるが、結論としては「どちらか片方を選ばなくてはいけないという質問の前提が陳腐。もっと言えば、今すぐ一緒に暮らせないことを重く考えすぎている人が多い気がする」というが、私の考えかもしれない。
「かもしれない」と述べたとおり、私も偉そうなことを言えるような立場ではなく、それなりには悩んだ。
実際に海外赴任の話が現実的になってきたのと同時進行で、夫との交際関係も進展しつつあったので、その時期は本当にイギリスに行くべきなのかと頭を抱えた。
夫と付き合う前、元々英国赴任を希望していた理由は、自分のやりたい仕事内容に挑戦できることと、もう一度欧州生活を経験できることであったが、夫と出逢ってからは東京での楽しい週末に満足していたため、後者の欧州生活の部分はあまり重要ではなくなり、前者の英国での仕事そのものに対する意欲が大きな理由となっていた。

何はともあれ、どうすべきか思い悩んでいた時、私にとって大事な視点となったのが「仮に東京に残る選択をした場合、次に何が起こるだろうか」である。
東京に残る選択は、完全に夫と一緒にいるためだけに取る選択となるので、仮にその後夫との関係が上手くいかなくなったり、それ以外でも東京で何か辛いことがあったりすれば、きっと「あの時ロンドンに行く選択をしていれば」と後悔するだろう。勿論、もう片方の選択にも別の種の後悔は付きまとうかもしれないが、東京に残った場合「あなたのために私は東京に残った」という押しつけがましい気持ちが芽生えるので、事あるごとに何の罪もない夫に辛く当たる可能性が高い。さらには、せっかく東京に残っても、夫の方が他国に転勤するリスクだって考えられる。
一方、英国赴任を選んだ場合、これは自分のためにした選択なので、何が起きても誰にも辛く当たることはできないし、その必要もない。自分のやりたいことを実現するために来たのだから、うまくいかないことも責任を持って自ら乗り越えるべきだし、乗り越えられるはずだ。浜崎あゆみ風に言うなら、「背負う覚悟の分だけ、可能性を手にしている」のだ。
仮に英国赴任を後悔したとしても、東京に残留した場合に起きる後悔のアレコレに比べれば大分マシだと言える。もし、英国赴任を彼に伝えた時点で、彼が別れを選択したとしても、それは仕方ないと思った。自分軸で決断して失敗したのであれば、自ら腹を括ることができるものである。

「キャリアか恋愛か」という問いに対するレディー・ガガの回答は「男はいずれ逃げるかもしれないけど、キャリアはアナタから逃げないわよ。迷わずキャリアを追い求めなさい!」だったが、残念ながら私を含む多くの一般的な会社員の場合は、彼女のようなスーパースターとは違い、キャリアに関しても確固たる軸があるとは言えない場合も多いので、キャリアも逃げないとは断言できず、彼女の名言ではお悩み解決できないことも多いだろう。

これを踏まえ、私がザ・一般人代表として出した結論が、先に書いた通り「無理にどちらか片方選ばなくてもいいんじゃない?(´▽`)」である。
というのも、今すぐ同居できないことが、直ちに恋愛関係を諦めることに繋がるという見方自体が、今の時代では短絡的すぎるのではないかなと思うからだ。
「遠くの親戚より近くの他人」という諺はあるが、テクノロジーの発展により、遠くの親戚と簡単に会話できるようになった現代社会には完全に当てはまらない場合も多い。
実際、私たちの場合、毎日ビデオコールで会話しており、物理的には何千キロも離れていても、結果的に1日の中で近所の誰よりも長く会話した相手となるから不思議なものである。むしろ、私が日本に住んでいた時は毎日電話していたわけではないので、会話時間だけであれば今の方が断然長い。
また、逆に同居していても、片方が夜勤のある職種であったり、出張や会食で多忙すぎたりする場合、物理的に生活が擦れ違ってしまい、殆ど会話できていない夫婦も少なくないのではないだろうか。
尚、駐在員であれば、配偶者が日本にいれば定期的に帰国できる権利もあり、日本で仕事していると中々とれない長期休暇を設定して第三国に旅行することだって可能だ。
逢える頻度に制約があれば、その分だけ普通のカップル以上に相手を大事にしようと思える。単身赴任だからといって、それは恋愛を諦めたということにはならない。

さて、本題以外の部分で色々と書き殴りすぎてしまった感があるが、もし、今「キャリアか恋愛か」という問いに直面している方がいたら、このブログを読んで「こんなやつもいるのか」と少しでも参考にしていただけたら幸いである。

尚、私の夫は今年11月に異動予定で、未だどうなるかはわからないが、欧州に赴任する可能性もゼロではない。
仮にそうなれば、遠距離という状況は続くものの、日本国内でいうと東京・九州間くらいの距離には縮まるので、毎週ではなくても時々週末に一緒に色んなヨーロッパの都市に遊びに出かけたりすることも可能だろう。
勿論、更に遠い国に転勤してしまうことも考えられるわけで、楽観視はできないが、少なくともこういった可能性が生まれたのは、私が英国赴任を選んだからである。

人生はゼロサムゲームではない。可能性や将来の選択肢は、多ければ多い方がいい。
そのために、今自分にとって最適な選択は何か、そういった視点で考えられれば、少し気持ちは楽になるのではないだろうか――――――。