Monamily in Paris (...in London/in Tokyo/in New York/etc...)

派遣留学でパリの街に恋し、東京でアメリカ軍人の夫と結婚し、日系企業の駐在員としてロンドンで単身赴任中の私の純ジャパ奮闘記

転勤族と駐在員、方言やあれこれ。

海外勤務経験者が「駐在員とローカルスタッフ(現地採用)は、本質的には永遠に分かり合えない」と言っているのをよく耳にするが、これは日本国内における「全国転勤有の総合職と地域限定職」の関係にも同じことが言える。

どちらが良い・悪いではないのだが、お互い立場が違い、全く異なる悩みを抱えているので、永遠に分かり合えないということだ。

海外勤務手当付の給与や住宅補助等の手厚い待遇を受けている駐在員は、会社からの命令で(時には本人の希望とは関係なく)知らない国へ派遣され、言葉の壁や文化の壁にアタフタしながら日本本社の期待を背負って新しい仕事に取り組む。

自らの意思でその国に住み、腰を据えて働いているローカルスタッフの多くは、その国の言葉や文化に精通しており、仕事そのものについても有能にこなしている場合が多いが、待遇面では駐在員よりも劣ってしまう。
そんなローカルスタッフからすれば、言葉も話せない・文化も知らない・場合によっては仕事も大してできない・どこの馬の骨かもわからない駐在員がひょこっと現れては日本に帰っていくわけだから、┐(´д`)┌ヤレヤレという気持ちになることも多いだろう。

一方の駐在員は駐在員でローカルスタッフの仕事ぶりに対して不満を持っていることも多く、お互い向いている方向が違うゆえに、その主張は平行線だったりする。

 

だが、冒頭に述べたように、これは何もグローバルな世の中となった最近の海外勤務における話に限らず、日本国内における全国転勤有の総合職と地域限定職にも同じことが言える。

聞いたこともない田舎の町への異動を命じられて東京からひょっこりやってくる全国転勤の社員は、その土地の方言も話せなければ現場の仕事のやり方も知らないうえに、数年経つとまた東京へ戻っていくわけだから、地域限定の社員からすれば┐(´д`)┌ヤレヤレとなってしまうが、一方の全国転勤社員も地域限定社員の仕事に不満があったりする。

彼らもまた、お互い向いている方向が違うゆえに、主張は平行線の一途である。

 

言うまでもなく、転勤族と駐在員という概念は排他ではなく、世界各地に転勤のあるタイプの社員であれば転勤族かつ駐在員ということになる。

いずれにしても、このように住居の移転を繰り返しながらキャリアアップしていくことが前提の会社員というのは、1つの土地に根付いて生きている人々と比べると、よく言えば柔軟性があり、悪く言えば根無し草のような性質である(勿論「人による」のだが、それを言うと身も蓋もないので、ここではステレオタイプについて語らせていただく)。

 

例えば、転勤族には地元愛がそこまで強くない人が多い。

誤解のないように補足すると、決して地元が嫌いなわけではなく、その他今まで住んだことのある地と自分の地元を公平な目で見て、それぞれの良いところと悪いところを心得ているから、自分の地元に妄信的になることがないのだ。

一般的に、横浜出身者には横浜が大好きな人が多い。横浜がこの世の至極だと信じてやまない人がとにかく多い。

私は、社会人となるまでは典型的な横浜人だったし、逆に社会人5年目くらいの頃はそんな典型的な横浜人を蔑視していた気がするが、今は横浜も川崎も千葉も埼玉も公平な目で見ることができていると思う。

たった5回の引っ越ししか経験したことのない私ですらそうなのだから、全国津々浦々&地球まるっと全世界での引っ越しを繰り返している人は本当にニュートラルなのだと思う。

さらに、これが転勤族の家に生まれた子どもの場合となると、子どもの頃からニュートラルなわけだから、適応力も柔軟性もずば抜けている一方で、地元という概念があまりないので、地元愛という概念すらなかったりするから面白い。

 

また、転勤族は、本人すらどこの方言かわからない言葉を話していることがある。
基本的に転勤族が転勤先の地で習得して見様見真似で話す方言は、地元の人から見れば不自然極まりないものだったりするが、そもそも彼らは引っ越すたびに新しい方言をランダムに覚えては使っているので、色んな土地の方言が混ざったオリジナル言語を話しているケースも多い。
海外駐在員の場合も同様に、色んな国のアクセントが混ざった英語を話しているケースが多い。仮にその国の言葉が殆ど話せなくても、地元民と話していればアクセントはうつるものだ。

広島に3年間住んでいた私自身も、マトモな広島弁は全く話せないが、広島から東京に引っ越した直後はコンビニの店員から「西側の出身ですか?」と聞かれたことがあった。また、最近は初対面の外国人(特にイギリス人)から「なんでお前の英語フランス語訛りやねん」とよく聞かれる。フランス語が殆ど話せないので複雑な気持ちだが、住んでいる土地の地元民が話している言葉のアクセントというのはうつるものだ。

 

在宅勤務やノマド型ワークスタイルの普及により、職場と住居の所在地が一致しない新しい生活様式も一般的となりつつある時代変化を踏まえると、いずれは転勤族や駐在員という言葉も死後と化す日が来るかもしれない。

近未来の人類は、全員がノマド化することで全員がかつての転勤族のようなメンタリティになるのだろうか。あるいは、ノマドたちがお気に入りの土地で定住を始めることで各地方に新たな文化や習慣をもたらすのだろうか。

先のことは誰にもわからないが、もしこのブログ読者の方々の中で、人生で一度も引っ越しをしたことのない方がいたら、是非一度は経験することをオススメする。

環境が変わっても人は変わらないとは言うけれど、本人の中では何かが変わるはずだから――――――。

 

※「色々考察」シリーズの記事一覧は以下のリンクよりご覧いただけます。

monamilyinparis.hatenablog.jp