2020年の秋、フランス移住後いきなりロックダウンで外に出れない中、「それでもフランスにいるからこそできることって何だろう」と考えた結果、「日本では見られないジブリがNetflixで見れるやん」という結論に至り、意味もなく英語吹替(+他の言語も)で見たりしてみたところ、色々と発見がありました。
ディズニーも混ざってますが、以下に言語と吹替の比較を書いてみます。
【千と千尋の神隠し(Spirited Away)】
(原語)
銭婆「一度あったことは忘れないものさ 思い出せないだけで」
↓
(英語吹替)
銭婆 "Once you met someone, you'll never really forget him. It just takes a while for your memories to return."
元々、抽象度が高いからこそ心に残る台詞なので、英語だと説明しすぎで、完全に良さが死んでしまっていますね。
【モアナと伝説の海(Moana)】
(原語)
Moana "Sometimes our strengths lie beneath the surface … Far beneath, in some cases.”
↓
(日本語吹替)
Moana「能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ?・・・能あるニワトリだけどね」
面白い訳し方だとは思うけど、意味が変わってしまっているので、あとはどちらが好みかという話になりますね。
個人的には、「能力があることを隠している」のではなく、「本人も気づかないくらい、深いところに自分の強みがある場合もある」と受け止めた方がストーリーの深さを味わえると思うので、圧倒的に原語が好きです。
【ベイマックス(Big Hero 6)】
(原語)
Hiro "I'm satisfied with my care."
↓
(日本語吹替)
Hiro「ベイマックス、もう大丈夫だよ」
個人的には、「帰ってきたドラえもん」のオマージュみたいな日本語吹替版が圧倒的に好き。
「大丈夫」って抽象的なんだけど、後半の感動シーンでヒロがベイマックスに言う「もう大丈夫だよ」は、
のび太がドラえもんに「僕はもう君がいなくても自分の力でジャイアンに勝てるよ」という趣旨で言う「大丈夫だよ」を彷彿させます。
と、ベイマックスの日本語吹替版が傑作だったことを踏まえると、
美女と野獣のフランス語吹替版や、ムーランの中国語吹替版が気になるところです。
【おまけ:火垂るの墓(Grave of the Fireflies)】
(原語)
節子「にいちゃん・・・」
(英語吹替)
節子 "Seita!"
昭和10年代生まれの日本人女性が尊属の男子を呼び捨てにしている絵は中々シュールやw
以上、いかがだったでしょうか?
あと、ジブリを英語吹替で見て驚いたこととしては、原語(日本語)だと台詞の無いところに、英語吹替版だと台詞が挿入されていたこと。日本人の観点から見ると、「それ言ったら風情がなくなるやんけ!」って思うようなところに、状況を説明するような台詞が入っているんですよね。
・・・まあ、ジブリに限らず、原語と吹替の比較って面白いなっていつも思います。
ディズニー映画とか、時々吹替の方が良い台詞になってる場合もあるなと感じるんですよね。
軽々しく「翻訳の仕事はもうすぐAIに奪われる」みたいに簡単に言う人も多いけど、ディズニー映画の吹替って結構クリエイティブな仕事だと思うよ。
歌の吹替は、キャラクターの口の形に合うような日本語を選んでますからね。
あと、印象的だったのはアラジンのホールニューワールドの以下の歌詞。
(原語)
"Tell me, princess now when did you let you heart decide?"
(日本語吹替)
"プリンセス、自由の花をほら"
一見、全く関係ない言葉を選んでるようにも見えるんだけど、このシーンでアラジンはジャスミンに白い花を手渡しているんですよ。
これを「自由の花」に見立てて、「君は今まで自分の意志で物事を決めることができなかったけど、この花を受け取れば君はもう自由だ」って言ってるんですよね。こういうのはAIにはできない仕事だと思いますよ。
・・・色々つれづれなるままに書いてしまいましたが、私は作詞家気質(一応保土ケ谷区歌作詞者です)なので、結構こういうの考えるの好きだったりします。
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